内容
昭和と平成をつむぐ、おいしい記憶をめしあがれ
飾らない視線で描く軽やかな文章が人気の著者が、誰もが持っている食の記憶をテーマにした21のエッセイを単行本化しました
【担当編集者からオススメの一言】
「おこわのおにぎりを見ると、ちょっとかなしくなる。(中略)……だけど(中略)……かなしくて苦いのは私の内側であって、おこわ自体に罪はない、と気づいたのは四十をとうに過ぎてからである。」(本文「かなしきおこわ」より抜粋)
ひと口食べた途端思いがけず、心の片隅にあった感情の記憶が蘇ってきたことが、ありませんか? それは時代の空気だったり、個人の思い出だったり…、嬉しくなるような記憶や、ほろ苦いような記憶も。
私たちの味蕾が記憶した味は、誰もが同じようにうなずける食感やおいしさで、つながっていて、それだから大きな安らぎを覚えます。でも、それぞれちょっとずつ、味付けの記憶は違うものなのかもしれません。
そんな舌の記憶を呼び覚ます、いとしいたべもの21品を、森下典子さんがこの一冊にこめて仕上げました。
思い起こせば、「森下さん、最近日本人の味蕾は減っているらしいです。大変です! 日本人の味蕾を呼び覚ます1冊を書いてください!」と始まったこの企画。
たべものとは何ぞや、味とは何ぞやといくつもの談義を重ねて重ねて…。
昭和と平成を紡ぐ、この懐かしく美味しいエッセイたちを、ほのぼのとしたタッチのイラストとともに、心ゆくまで召し上がれ!(編集担当U)
目次
オムライス世代
くさやとバンデラス
わが人生のサッポロ一番みそラーメン
カステラに溺れて
ブルドックソース、ちょうだい!
端っこの恍惚
水羊羹のエロス
カレー進化論
父と舟和の芋ようかん
他