【担当編集者からオススメの一言】

　私が初めてビームスに足を踏み入れたのは、大学生の頃。既に25年以上も前のことだ。Beginという雑誌の編集に携わることになり、仕事でのお付き合いが始まったのが15年以上前。お店やオフィスに数え切れないほど足を運び、いろいろな方に取材をしたり洋服についての教えを受けてきた。

　そのビームスが30周年を迎えるという話を聞き、思いついたのがこの企画。商品やお店の魅力は様々なメディアが情報として伝えているが、15年前に、私が取材を始めた当初から感じていた「なんて不思議な会社なのだろう‥‥なんて面白い会社なのだろう。」という思い──考えてみると、この印象こそがビームスという「企業」を成長させてきた秘密なのではと思い至った。

　アメリカ式経営がグローバルスタンダードとしてもてはやされる中、独自のスタイルによる経営を行い、30年間ほぼ右肩上がりの成長を続けているこの企業には、他の企業や、これから会社を始めようと考えている方への「会社経営のヒント」が隠されているに違いない。旧知の仕事仲間である山口氏に執筆の依頼をし、ビームス設楽社長にご協力をお願いに行ったとき、設楽氏の口から出た「うちの会社がうまくいっているのは、奇跡だと言われているんですよ」という言葉が、タイトルのヒントになった。神が起こす奇跡と違って、普通の人間が起こした奇跡には何かその理由があるはず。その理由こそが前述した「会社経営のヒント」になるはず。

　設楽氏をはじめとするスタッフへのインタビューは、非常に面白い取材であった。特に設楽氏には過密スケジュールの中、時間を割いていただき、数度に渡って長時間の濃密なインタビューが実現した。おかげで、メディア初出のお話や、ほとんど知られていないエピソードなどをお聞きすることが出来た。全ての作業を終えた今思うこと、それは「ビームスは、やっぱり面白くて、不思議で、そして素敵な会社」だということ（決してヨイショではありません）。

　では、なぜビームスが「面白くて、不思議で、素敵な会社」なのか？　その答えを知るために、本書をぜひご一読いただきたい。（担当編集Ｏ）